フォトグラファー郡 大二郎

大阪芸術大学写真学科卒業後、自動車系専門出版社の写真部を経て’90年よりフリーランスとして自動車、オートバイを被写体として専門誌、広告、カタログなどで活躍中。

エクリプス クロス
プログラムダイレクター
山内 裕司

1996年三菱自動車工業 研究部入社。2015年からエクリプス クロスを担当、2017年からC&D-seg プログラムダイレクターを務める。

2017年3月、ジュネーブ国際モーターショーで世界初披露された「エクリプス クロス」。その展示車は海を渡り、現在、大いに話題を集めている。そして5月末に開催された自動車専門誌「ル・ボラン」が主催したオープンエアのモーターショー「ル・ボラン カーズ・ミート2017 横浜」では、初めてエクリプス クロスが陽光のもとにデビューを飾った。

5月の清々しい日差しを一身に浴びたエクリプス クロス。その姿は、クルマのデザインやスタイリングに日々向き合っている自動車カメラマンの目には、果たしてどのように写るのだろうか? ル・ボラン誌の表紙や巻頭企画でダイナミックな写真を披露しているフォトグラファー、郡 大二郎。そしてエクリプス クロスの開発責任者であるプログラムダイレクター、山内 裕司。ル・ボラン誌ウェブ編集長のファシリテーションにより、2人のCROSS TALKが横浜・赤レンガ倉庫で行われた。

郡 :「今朝イベントが始まる前に撮影したのですが、第一印象はフロントマスクがとてもスッキリしているな、という感じでした。最近のクルマはフロントのデザインに凝りすぎて、側面に回ってもフロントの強烈な印象がなかなか頭から離れないことが多い。でもエクリプス クロスはそうではなく、サイドにはサイドの表情がちゃんとある。かといってフロントの印象が薄いわけではないし、側面への連続性もきちんとある。それぞれがいい意味で上手く完結しつつ、かつ一体感のあるデザインだなと。」

山内 :「ありがとうございます。実はこのクルマのデザインで一番意識したのは側面なんです。イメージとしては、アスリートがクラウチングスタートの姿勢をとり、今まさに走り出そうとしているところ。窓の形やキャラクターラインで“くさび形”を強調し、左右のテールランプやそれらを繋ぐガーニッシュを高い位置にしたのはそのためです。」

郡 :「なるほど。どうりでリヤはローアングルから狙うのが一番カッコよく撮れるな、と思ったわけですね。止まっているのに躍動感がある。でも面構成が非常に複雑じゃないですか。ウインドウが上下に2枚あって、その間のハイマウントストップランプやテールランプがとても立体的。実は撮影するのに苦労しました。」

山内 :「そうかもしれませんね。開発も苦労しましたから(笑)。ダブルガラスにしたのは後方視界を確保するためでもあるんですが、ハイマウントストップランプを組み込んだガーニッシュをリヤのアイキャッチにできるよう、視認性とデザイン性のバランスをとるよう配置の検討に相当な時間をかけました。スッキリさせるためにリヤワイパーをスポイラーの奥に格納させて見えないようにしたのもこだわりです。」

郡 :「フロントやサイドはどのアングルから狙っても絵になりますね。でも実はそんなクルマはあまり多くなくって、特にSUVの場合、フロントを低い位置から狙うと大きく迫力のあるグリルの印象が強くなりすぎて、絵作りに困ることが多い。その点エクリプス クロスはSUVなのに顔つきがシャープで洗練されているので、アングルを決めやすかったです。ただ……このボディカラーはカメラマン泣かせな赤ですね。」

山内 :「この赤は新色なんです。光と陰によって本当にいろいろな表情をみせてくる赤なので、なかなか写真で色を表現するのは難しいかもしれません。実はわれわれもこの色を実現するには苦労しました。デザイナーがすごくこだわっていたと同時に、私もひと目で気に入り『やるぞ!』と言って周囲を鼓舞してきました。ただ生産行程でこの色を出すのが本当に難しくて、何度もトライ&エラーを繰り返し、やっと量産の目処がたったところです。」

郡 :「早朝に撮影したのですが、最初は曇天でした。そこでエッジの立ったラインを強調するためにストロボを使ったのですが、するとワインレッドだと思っていた赤がいきなりビビッドな赤に変わりとても驚きました。光源とボディの距離によって色味が劇的に変わってゆくので、ストロボを離しながらちょうどいい位置を探りつつ撮ったんです。いまのような夕方の強い光を浴びると本当に鮮やかな赤になりますね。でもシックな赤もビビッドな赤も、確かにエクリプス クロスが持つ表情なわけで、そんな意味でこの赤をどのように写真として表現するか、実は現場でかなり悩みました(笑)。」

山内 :「日向だととても情熱的な赤。日陰だとすごく落ち着いた赤。彩度と深みの両方を持つ赤を目指しました。ところで、エクリプス クロスで気になった部分というか、パーツやディティールはありますか?」

郡 :「面白いなと思ったのはボンネットの形ですね。両端にエッジの立った強いラインが入っていますよね。撮影時はその内側の微妙に落ち込んだ部分に雲が写り込んでいたんですが、それがキレイなS字を描いていました。スタジオ撮影ではボディの形状をわかりやすく表現するため、わざと照明の蛍光灯を写し込んだりすることがあります。それを思い出しました。このあたりの写り込みまで考えてデザインされたのですか?」

山内 :「いや、それははじめて聞きました。あぁ、なるほど、ここですか!いゃ、新たな発見です(笑)。ボンネット両端のラインを際立たせて『陽』と『陰』の表情をつけ、それが人とクルマを守るプロテクターを表現した『ダイナミックシールド』に繋がってゆく、という部分は意識していたのですが……。ちなみに今回のダイナミックシールドは進化型という位置づけで、ウインカーとフォグランプは『コ』の字型になっているメッキ部分の内側に統合する一方、ヘッドランプとウインカーランプは切り分けて配置しています。これは対向車からの視認性を高めるという機能面も意識したデザインです。 」

郡 :「メッキといえば、側面の窓枠とボディ下のモールディングがとてもシャープな形をしていて、これらが対になることで上手くサイドを引き締めていますね。ちょっと露出を落として撮影するとキレイにこのふたつが浮かび上がってとても印象的でした。きっと光が目まぐるしく変わるような、夜明け前のビル街を走り抜けるようなシーンがカッコよさそうですね。青いガラスの建物がそびえ立つ中、光によってボディの赤がさまざまに表情を変え、照明に反射してメッキモールが閃光を放つ。シンガポールあたりが似合いそうです。」

山内 :「そうなんです。実は先週海外に出張していて、同僚とまさにそんな話をしていたところでした。僕らのイメージでは、夜の都会に似合うクルマ。ジュネーブショーの時に公開したオフィシャル写真にもすべて夜のイメージで撮影した写真を多く含めています。」

郡 :「そんな話を聞いていたら、また改めてじっくり撮影したくなってきました(笑)。」

クルマを作るプロと、クルマを撮影するプロ。2人のプロの話からみえてくるのは、時間や場所など、シチュエーションに合わせて様々な表情を見せてくれるエクリプス クロスの多彩な魅力だった。あなたの目には、どのように映るだろうか。国内発売はまだ少し先になるが、展示会やイベントでその姿を実際に確かめてみてはいかがだろう。