モータージャーナリスト 岡崎五朗
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エクリプス クロス プログラムダイレクター
山内裕司
新ジャンルSUVへの挑戦

モータージャーナリスト岡崎五朗

1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学卒業。
多くの雑誌やウェブサイトなどで活躍中。
日本自動車ジャーナリスト協会理事。

エクリプス クロス プログラムダイレクター山内裕司

1996年三菱自動車工業 研究部入社。2017年からC&D-seg プログラムダイレクターを務める。

三菱SUVの新提案

自動車業界にスーパースターがいるとすれば、それは間違いなくSUVと言えるだろう。なぜなら、セダンやハッチバックといった既存のジャンルよりも、SUVマーケットは増加の一途をたどっているからだ。となれば当然、多くの自動車メーカーが新商品を投入し、競争も激化する。そんななか、三菱の新型SUVである「エクリプス クロス」は、ユーザーにどんな価値を提供するのだろうか。エクリプス クロス プログラムダイレクターの山内祐司氏の口から最初に出てきたのは「スタイリッシュ」「スポーティ」「上質」「三菱自動車ならではのSUVの新たな提案」という4つのキーワードだ。

3月のジュネーブショーでワールドプレミアを飾った実車を見た方であれば、最初の3つは理解して頂けるだろう。同じ場所に居合わせた世界中のプレス関係者も、エクリプス クロスがスタイリッシュかつ上質なクルマであることを感じとったように思える。では、4つ目の「三菱自動車ならではのSUV」とは何を意味するだろうか。山内氏に直接話を聞いてみる。

「三菱には長年に渡るSUV作りの歴史があります。パジェロをだしたのは1982年ですからもう35年前。さらに言えば、量産には至りませんでしたが、1936年にはPX33を開発しています。こうした歴史をバックボーンとした数々のノウハウ があるからこそ、多くのモデルが群雄割拠する今日のSUVマーケットに新たな提案ができると考えています。」

流行を追うという行為は、しばしば“本物”であることと矛盾を起こす。実際、SUV人気が高まるにつれ、マーケットには“SUVのようなカタチ”をした乗用車が増えている。前輪駆動しかラインナップしない、最低地上高が乗用車とほぼ同じ値にとどまっているもの、デザインを重視するあまり実用性を犠牲にしたもの・・・。SUVを流行商品として捉えるユーザーはそういうクルマでも受け入れてしまうだろう。しかしSUVに“本物”を求めるユーザーは異なる判断を下してほしい。三菱が目指しているのはまさにそこなのである。スタイリッシュでスポーティで上質なコンパクトクロスオーバーSUVでありながら、SUVとしての機能には徹底的にこだわる。それが三菱らしさであり、また他車との差別化につながると考えている。

SUVのアドバンテージ×
クーペスタイル

「デザイナーにはスタイリッシュであることを追求させる一方、SUVと名乗るためには最低限こうあるべきだという、機能面に対する三菱の考えを湾曲させてしまうのは避けようと伝えました。もちろん、クーペとSUVの相反する要素を両立させるのは大変なことです。しかし、そこにこだわってこその三菱であり、我々がお客様にご提供できる価値もそこから生まれるのだと信じているので、迷いはありませんでした。都会が似合うクルマでありながら、雪や雨、未舗装路といった悪条件下で走らせたとき、三菱のSUVだからこそといった安心感や信頼感をお客様に感じていただきたい。相反することへの両立には徹底的にこだわりました。」と山内氏。

この言葉を裏打ちするのが、エクリプス クロスが採用する「S-AWC」だ。電子制御式4WDを核とする三菱独自の車両運動統合制御システムは、ランサーエボリューションやアウトランダーで培ってきた三菱ならではのアドバンテージである。加えて、ひと際印象深いのが、クロスオーバーSUVとしては異例とも言うべき大きな最低地上高だ。すなわち、S-AWCとヘビーデューティー4WD並みの最低地上高を確保していること。この2点だけを見ても、エクリプス クロスが名ばかりのSUVとは異次元の走行性能を備えていることが容易に想像できるだろう。

実用性とスタイルの両立

三菱のSUVとしてはずせないポイントがもう一つある。思い切りスポーティなルックスとしながらも、実用性を切り捨てていない点だ。大胆なくさび形のサイドビューがエクリプス クロスの最大の特徴だが、それによる後方視界の悪化を防ぐためリヤにダブルガラスを採用。運転席に座ってみたが、リヤビューカメラがなくても十分な視界を得られる。「まずは目で見えるリアルな視界をきっちり確保することがクルマづくりの基本であり、そこにこだわるのがエンジニアの良心だと思うのです。そういう意味で、三菱として、SUVとして、やっぱりここは譲れないよという部分は常に意識していましたね。」と語る山内氏。

「カッコいいスタイルにしたかったので後席と荷室スペースはある程度割り切りました」とのことだが、後席には予想以上にゆとりがあるし、サイドウィンドウが後方まで伸びているため開放感もある。荷室はたしかにコンパクトだが、後席スライド機構を活用すればかなりの量の荷物を積み込むことも可能となる。割り切ったと言いつつ実用性との両立ぶり・・・三菱のSUVづくりにはいつの時代にも、一家言をもったクルマづくりが根底にあるのが三菱のSUVなのだ。

その想いの中で、コンセプトとしてもっとも印象に残ったのが「エクリプス クロスはSUV発想で作ったクーペであって、クーペ発想で作ったSUVじゃないんですよ」という言葉だ。エクリプス クロスはたしかにクーペのようにスポーティでスタイリッシュなSUVだ。しかしその中心にあるのは「三菱のSUV」という揺るぎない価値観なのである。